生きた社会現象を考察するうえで学ぶものは

〝たとえば、「ニート」の増加を若者の生き方の変化とみるなら、それを導き出した社会の影響に目を向け、若者を大人にさせない社会とは何かを追究する必要があるでしょう。あるいは、携帯電話の普及が人びとのコミュニケーションのあり方を変えたとするなら、それは人間関係が広がったのか、もしくは閉じたのか、両方の視点から検証を試みなければなりません。そうした実証研究をとおして理論化し、事象について光のあて方を変えることで、社会学はその背後にあるさまざまな真理を浮き彫りにします。〟


社会学コース – 早稲田大学 文学部より引用させていただきました。


生きた社会現象を考察するうえで学ぶものは、社会学かもしれません。


社会学を学ぶような視点で、
『人はなぜ語るのか(叢書文化の伝承と創造)』

Ⅱ章 語りの源流への旅-声と言葉と言霊と を紹介してみます。


昨年、報道された埼玉少女誘拐事件について、
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「なぜ少女は2年間も逃げられなかったのか?」
多くの方々がこの疑問を持たれたのではないでしょうか。


埼玉少女誘拐事件

 埼玉県朝霞市で女子中学生(15)が行方不明になり、約2年ぶりに保護された事件で、埼玉県警は31日、東京都中野区東中野3丁目、大学生寺内樺風(かぶ)容疑者(23)を未成年者誘拐容疑で逮捕し、発表した。調べに対し「間違いありません」と容疑を認め「(連れ去り当時、女子生徒との)面識はなかった」と話しているという。

朝日新聞デジタル-2016年3月31日より引用

この事件についての考察するうえで、
『人はなぜ語るのか(叢書文化の伝承と創造)』Ⅱ章 語りの源流への旅-声と言葉と言霊と
想像力の限界と性差-137頁を高覧いただきたいと思います。
古典文学研究者 立石和弘氏の『男が女を盗む話―紫の上は「幸せ」だったのか』を取り上げて紹介しています。

この著作は、『伊勢』『大和』『源氏』『更科』『うつぼ』等の平安期の物語から、嫁盗みに始まる男女の結びつきを広く渉猟(しょうりょう)しつつ、当時の男女の性意識に迫るもので、同時に作者の想像力のあり方をとらえる格好の論考になっています。

…中略…(『大和物語』の一五五段「安積山(あさかやま)」)

〈まず女は男のことばに騙され、強引に安積山の庵に捉えられた。ここで注意したいのは、女はこれまでとはまったく異なる環境に身を置いたということである。大納言邸では、親に加えて多くの女房たちのかしずきがあったのであり、それが一転して、男のほかには誰も世話をする人がいない環境に変る。当然のこととして、女はそうした条件のなかで生き延びるすべを知らない。女の生存条件はすべて男に委ねられているのであり、「食う」という表現に反復されるのもそのことと関わっている。……この男往(い)ぬれば、ただ一人物も食わで山中にゐたれば、限りなくわびしかりけり。……(この上なく心細かった)という女の心情は、この食の不安と連動している。男が戻ってこないことは、すなわち女の死を意味する。生きるために男に依存しなければならない環境に女は置かれている。〉

立石和弘氏の『男が女を盗む話―紫の上は「幸せ」だったのか』の引用の結びに、
片岡輝は、

 圧倒的に有利な立場に立つ者が、その威力を笠に着て、弱い立場の人間に何らかの嫌がらせをしたり何かを要求したりすることを「パワーハラスメント」といいますが、いやいや従わざるをえないことと、自らの意思ですることとを等価とみなすことは許されません。


と意見を述べている。


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